ふりかえりの大切さ

みなさん、こんにちは。楽天大阪支社でお仕事させていただいているイデルと申します。今回は「ふりかえり」についてお話したいと思います。

数年前、私はソフトウェアエンジニアからプロジェクトマネージャーにキャリアパスを変更し、それから様々なフレームワーク、方法論やプロジェクトをハンドリングする方法、チームとの関わり方を試してきました。その話は次のR-Hackの記事で扱うことにして、この記事では「ふりかえり」に焦点を当てていきたいと思います。

ふりかえりとは、製品をリリースした後に行われるミーティングのことで、開発の中で行われたことを話し合い、その学びや会話をもとにその後改善していくことを目的としています。

ふりかえりは大事ですか?

とても大事です。

  • チームは常に改善していく必要があり、それなくしてはチームが停滞してしまいます。

  • チームのベストプラクティスを発見し、継続するようにしてください。

  • ふりかえりはお互いに感謝を贈り合う絶好の機会でもあります。

  • 良い面に焦点を当て、さらに改善できる方法を探りましょう。

  • 名指しや批判をしてしまっては、ふりかえりの本来の目的を見失ってしまいます。

また、チームはそれぞれ異なります。多様性のあるチームで仕事をしている場合、他のメンバーの文化的背景を踏みにじったり、誤って侮辱したりしないように、境界線を設定するようにしましょう。

ふりかえりやその重要性に関して基本的に理解できたところで、私の経験について詳しく説明していきます。

ふりかえりを知ったきっかけは何でしたか?

およそ15年に渡り、私は主にミドルウェアの開発を行ってきましたが、それはウォーターフォール型開発で、チームはアジャイルもスクラムも全く使ったことがありませんでした。職場の同僚と会話するのは仕様検討や質疑応答の時ぐらいでした。転職して楽天のチームに入った時、私は初めてアジャイル、スクラム、朝会やふりかえりについて知りました。これらについてそれまで全く経験が無かったので、理解するために勉強しなければいけませんでした。

最初のふりかえりはどうでしたか?

何が起きているのかよくわかっていませんでした。気付いたことを付箋に書くように言われ、その後一つ一つについて議論を行い、グループ化しました。誰かがその写真を撮り、コンフルエンスのページを作成し、それで終わりました。その後、そのことについては何も聞いていません。 イベント自体はまあまあ良かったと思います。メンバーの大半は静かでほとんど何も話さず、議論を独占していた人が何人かいました。あまり充実した30分ではなく、その時はふりかえりはただの時間の無駄だと思いました。

「時間の無駄」だと思った気持ちは、いつ、どのように変わりましたか?

チームで組織変更とプロセス改善が行われたため、私はチームマネジメントのさまざまな方法を学ぶことができました(私はマネージャーではありませんでしたが)。また、ふりかえりを行っている別のチームに参加する機会もありました。 後者の方が考え方が変わる大きな要因だったかもしれません。他のチームがどのようにコミュニケーションを取り、改善のために意見やアイデアを共有し、それらがきちんと実行されたか、チームにどのような影響を与えたかを確認することができました。

もちろん、全てのチームが良かったわけではなく、ふりかえりで口論や非難をして生産的なアウトプットのないチームもありました。

ふりかえりの善し悪しは、チームによるふりかえりの捉え方や、ファシリテーションに大きく依存します。

おすすめのスタイルはありますか?

チームが心地良いと思うやり方が良いです。私が試したスタイルがいくつかあるので、紹介していきます(おすすめ順というわけではないです)。

Spotifyの「Squad Health Check – 同僚がこの方法を紹介してくれたのですが、チームが現状を可視化し、議論し、評価することで、アクションプランを明確にできるという点で大変良いと思います。私はコロナ禍前にカードをダウンロードして印刷し、ラミネート加工してチームに配りました。何度かこの方法を試しましたが次第に慣れてきて、本当に改善しなければいけないことに焦点を当て、現実的なアクションプランを立てることができるようになりました。成果をより明確にイメージできるように、月に1、2回このスタイルを使用することになりました。

残念ながら、コロナ禍もあり、直接会っての会は開催できていません。ある同僚は、Kahoot(?)でゲーム版を作ってくれました。私はというと、もっとシンプルな日本語版が欲しかったので、Microsoftのアンケート方式のものを作りました。日本語版はこの記事の最後の方で紹介します。

Squad Health Checkの結果

Moving Motivators – マネージャーとの1on1にはこれが一番だと言う人がいるかもしれませんし、私もそう思うのですが、実際はチームでやるのが楽しいです。私達は毎月やってみて、チームの状況や個人の気分によって、モチベーションが変わることがわかりました。毎月の記録を一箇所に集め、変化を簡単に把握できるようにしていました。また、マネージャーには各チームメンバーのモチベーションを共有しました。

2019年3月開催のふりかえりにおけるモチベーション

2019年7月開催のふりかえりにおけるモチベーション

2019年12月開催のふりかえりにおけるモチベーション

自分の一番のモチベーションが一年を通してずっと変わらなかったことが興味深かったですね。

最下位というわけではありませんが、最後は KPT(Keep Problem Try) です。 歴史を紐解けば、この方法はトヨタ自動車が継続的な改善を行うために開発しましたが、今でも十分シンプルで便利です。まだふりかえりをしたことのない新しいチームには有効なスタイルだと思います。しかし、ふりかえりを継続するうちに少し単調に感じてくると思うので、先に紹介したSpotifyの「Squad Health Check」など、他のスタイルと組み合わせると良いでしょう。

様々なスタイルのふりかえりがありますが、コロナ禍においても相性の良い方法を試してみてください。今はふりかえりをするのが難しくなりましたが、きっと良い方法があるはずで、たくさんのチームがすでに色々なオンラインツールを使ってチーム改善の方法を模索しているはずです。MiroやIdeaboardzなんかが、良いツールの一例ですね。 MiroIdeaboardzなんかが、良いツールの一例ですね。

結果はマネージャに共有していますか?

もちろんです。チームだけでは実行できず、マネージャーのサポートが必要なアクションプランが出てきた場合、それが適切な人に届くようにするのはグループリーダーの役目です。ただし、メンバーがマネージャーから非難されたり標的にされたりすることがないようにしてください。各個人の意見が、評価に影響しないようにしなければいけません。

マネージャーとメンバー、お互いの信頼が大事です。ふりかえりを積み重ねていくことでメンバーが意見を言い合える心理的に安全な場が作られ、信頼関係を築いていけるのです。

免責事項: ここに記載している情報は全て個人の経験に基づく感想となり、全ての方に当てはまるわけではありません。アジャイルやスクラム、多様性のあるチームで働くことに関する書籍は多くあります。

一緒に働く仲間を募集しています

最後まで読んで頂きありがとうございました。 楽天のECインキュベーション開発部では、事業成長の原動力となり、共に新しい価値を創造し、育てていくことができる方を募集しています。この記事を読んで興味を持っていただいた方はぜひともご応募お待ちしております。

japan-job-en.rakuten.careers

付録:Spotifyの「Squad Health Check」日本語版

Delivering Value・価値の提供

  • 青:誇りを持って良いものを届けています。ステークホルダーも満足しています。
  • 黄:変化なし。
  • 赤:残念なものを届けています。恥ずかしいです。ステークホルダーにも嫌われています

Easy to Release・リリースが簡単

  • 青:リリースはシンプルで安全で簡単で、ほぼ自動化されています。
  • 黄:悪くない。
  • 赤:リリースはリスクが高くて、大変で、手動でやることがたくさんあり、とても時間がかかります。

Fun・楽しい

  • 青 : チームと一緒に仕事をするのはとても楽しいです。
  • 黄:悪くない
  • 赤: つまらない。。。。

Fun・楽しい

  • 青:チームと一緒に仕事することがとても楽しいです。
  • 黄:悪くない。
  • 赤:つまらない。。。。

Health of Codebase・コードベースの状態

  • 青:コードの品質に自信があります。きれいで、読みやすくて、テストの網羅度も高いです。
  • 黄:リファクタリングした方が良いです。
  • 赤:コードはとても汚く、技術的負債が全く手に負えません。

Learning・学習

  • 青:いつもたくさん面白いことを学んでいます。
  • 黄:学ぶ時間が少しあります。
  • 赤:学ぶ時間が全くありません。

Mission・ミッション

  • 青:なぜ自分たちがここにいるのかを正しく理解していて、ワクワクしています。
  • 黄:聞いたことはあるが、あまり認識していません。
  • 赤:ハイレベルのビジョンや目標がなく、なぜ自分たちがここにいるのか全く分かりません。ミッションは不明確だし、モチベーションも上がりません。

Pawn or Players・駒なのかプレーヤーなのか

  • 青:自分たちの運命は自分たちでコントロールしています。何を作るのか、どのように作るのかを自分たちで決めています。
  • 黄:気にしていません。
  • 赤:私たちはチェスの駒のようなただのあやつり人形です。何を作るのか、どのように作るのかに意見を出すことはありません。

Speed・スピード

  • 青:本当に素早くやり遂げます。待つことも遅れることもありません。
  • 黄:普通
  • 赤:何も達成できていないように感じます。何度も行き詰まったり、中断したりします。依存がたくさんあるため、作業も進みません。

Suitable Process・適切なプロセス

  • 青:働き方はぴったり!
  • 黄:まあ・・・普通
  • 赤:働き方は最悪!!

Support・サポート

  • 青:必要な時にはいつでも素晴らしいサポートやヘルプが得られます。
  • 黄:たまにサポートしてもらえます。
  • 赤:助けを求めてもサポートしてもらえないので、行き詰まったままになります。

Teamwork・チームワーク

  • 青:連携がばっちり取れている楽天のスーパーチームです。
  • 黄:特に気にしていません。
  • 赤:他のチームメンバーがやっている事に興味がなくて、気にもしないメンバーの集まりです。